あなたと同じ歳の時、
歴史上の人物は何をしていたか?
年齢で見る歴史人物ショートストーリー。
小林一茶 三十歳
江戸を出て、諸国行脚。
寛政三年(1791年)、二十九歳の一茶は、江戸の俳諧、葛飾派の宗匠となる。十五歳で江戸に出てすでに十四年がたっていた。しかし、彼はどうしても、都会と都会人の暮らしには馴染めなかった。ただあくせくとお金を求めて走り回っている・・・これは、人間の本当の暮らしではない。そう感じていたのだ。
「この世の暮らしは、舞台のようなもんだ。人はみな、芝居をしてるんだ」
こんな江戸に嫌気がさしたのか、自らの俳諧に新境地を開くつもりか、翌年、一茶は僧形に身をやつし、西国への旅に出発する。三十歳の春であった。
宗匠とは言ってもまだ若く、いわば無名の俳人である。足のむくまま気のむくまま、自分の師匠であった二六庵竹阿の門人や知己を訪ねて、関西、中国、四国、九州とさすらいの旅を続ける。しかし、旅の空にあっても、一茶は生まれ故郷の柏原のことだけは忘れなかった。もしかしたら、この旅も、故郷を求める旅であったと言えるかもしれない。
『初夢にふるさとを見て涙かな 一茶』
小林一茶(1763~1827)
信州柏原に生まれる。家庭不和の中で少年時代を過ごし、江戸に出て、俳諧の道に入る。諸国行脚の後、句集や文集を発表。後に帰郷して柏原に定住する。