あなたと同じ歳の時、
歴史上の人物は何をしていたか?
年齢で見る歴史人物ショートストーリー。
明智光秀 五十五歳
敵は、本能寺にあり。
光秀は、今、愛宕山にあった。古来ここは、戦の神をまつる霊場として名高い。彼は、神前で三度クジを引く。何か心の迷いを決するかのように・・・。
翌日、この愛宕山で連歌の興行があった。発句を光秀が吟じた。
「時はいま 天が下しる 五月かな」
この時、列席していた連歌の宗匠里村紹巴、この発句を聞いてあっと思った。
「時とは土岐、つまり明智殿の事じゃ。雨が下しるとは、すなわち天下を治める事か!」
そして、天正十年(1582年)六月一日、ついに運命の時が来た。この夜光秀は、一万三千の兵を率いて、
秀吉の援護と称し中国路へと出発した。丹波を出て、老の坂を越えると桂川に出る。中国路へは、
ここから南下しなければならない。川を渡れば、京である。しかし、ここで光秀は突然、全軍に桂川を渡るよう命じた。
そして、
「わが敵は、中国にあらず。敵は・・・本能寺にあり!」
と、全軍にその真意を伝えたのである。この時、
光秀五十五歳であった。
明智光秀(1528~1582)
美濃に生まれる。信長に仕え、信長上洛の際、これに従う。石山本願寺攻めに参加。丹波攻略にも奮戦。後に信長を本能寺に討つ。