あなたと同じ歳の時、
歴史上の人物は何をしていたか?
年齢で見る歴史人物ショートストーリー。
与謝野晶子 三十四歳
愛に生きた情熱の女流歌人、パリへ飛ぶ。
『三千里わが恋人のかたはらに 柳のわたの散る日に来る』
晶子は、パリへ飛んだ。愛する夫鉄幹の元へ。
ひたむきに鉄幹に憧れ、結婚してから十一年。晶子の歌風は、ますます磨きがかかっていた。しかも、随想集を出したり、古典の解釈で才を見せたりと、その名声は日ましに高まっていた。だが、皮肉にも、その陰でしだいに薄れていく鉄幹の存在・・・。そして、夫鉄幹は、自らの芸術の高きを求めてひとり欧州へと旅立つのだった。
「いくら世の中に受け入れられても、やはり、わたしは、あなたがいなければだめです。あなたが必要なのです」
鉄幹の後を追って、晶子もまた、翌年の五月にパリへ向かう。明治四十五年(1912年)、昌子三十四歳の時である。恋の歌を詠んで一世を風靡した歌人与謝野晶子。夫鉄幹への恋は、終生変わることがなかった。
与謝野晶子(1878~1942)
明治・大正・昭和に渡って活躍した女流歌人。与謝野鉄幹と結婚して、さらにその作風に磨きがかかる。自由奔放に生きた強烈な個性の持ち主である。